フランスの教育制度の特徴は?日本との違いを解説!
フランスと日本の教育費
フランスと日本では、教育費はどのように異なるのでしょうか?
日本の教育費
文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査 」によると、高校まで公立・大学は国立に進学した場合の平均教育費はおよそ766万円、すべて私立に進学した場合は約2228万円と、選ぶ学校によって大きな差があるといいます。
ただ2019年10月より幼児教育無償化、2020年4月より私立高校の授業料の実質無償化が導入されるなど、日本の教育費は近年減少傾向にあります。しかし無償化されるのは授業料だけで、給食費や制服代、教材費、修学旅行費などの費用は必要になります。
フランスの教育費
フランスの教育費は、高校までは無償となっています。大学に通う場合も、数万円ほどの登録料程度しかかからないというのだから、驚きですね。フランスでは、あらゆる人に教育を受ける権利があるという考えが一般的で、フランスの国家予算のおよそ20%が教育にあてられているそうです。
日本の教育にあてる国家予算が5%程度だということと比較すると、社会全体の教育への関心の高さがうかがえますね。しかし一方で、フランスでは日本のおよそ1.5倍の社会保険料や税金がかかる点に注意が必要です。
ただしフランスでも、私立学校やインターナショナルスクールでは学費が必要になります。一見、無償の公立学校の方が良いように思えるかもしれませんが、ある程度収入がある家庭では私立学校を選ぶことも多いようです。
フランスでは教職員や学校関係者もストライキをすることがあるため、ストライキによって振り回されてしまうことも少なくないのだとか。そうしたストライキを避け、質の良い教育を受けさせたい人が多いので、私立学校の人気が高いのでしょう。
フランスと日本の学校制度
フランスと日本では、学校制度も異なります。おおまかな違いを簡単にご紹介します。
日本の学校制度
日本の学校制度は、以下のようになっています。
★~2歳 保育園
★3~5歳 幼稚園あるいは保育園
★6~11歳 小学校
★12~14歳 中学校
★15~17歳 高等学校
このうち小学校の6年・中学校の3年の合計9年間が義務教育にあたります。義務教育期間中は、留年になることはほとんどありません。出席日数や成績に問題がある場合、留年するかどうかは校長によって判断されるそうですが、本人や保護者の意思を重視して決定されるため、進級・卒業するケースが大半だといいます。
フランスの学校制度
フランスの学校制度は、以下のようになっています。
★~2歳 保育園
★3~5歳 幼稚園
★6~10歳 小学校
★11~14歳 中学校
★15~17歳 高等学校
このうち、幼稚園の3年・小学校の5年・中学校の4年の計12年間が義務教育となります。フランスでは2019年より幼稚園が義務教育になったため、日本よりも義務教育期間が3年長いのが特徴です。
一昔前までは、フランスではストレートで卒業できる人は少なかったといいます。上記で紹介した年齢はあくまで標準就学年齢であり、成績によっては留年や飛び級となることも多かったそうです。ただし近年では、義務教育期間中は極力留年させない方針に移行しているようで、多少の成績不良で留年になることはないといいます。
フランスの学校の特徴
ここからは、フランスの学校別の特徴をご紹介します。
フランスの幼稚園
フランスの幼稚園では、年中からフランス語のアルファベットを学び始め、年長になると小学校に近い雰囲気で授業が行われるようになります。小学校へ進学する前に、多くの子どもたちがアルファベットや自分の名前を書けるようになっているのだとか。
また授業の中で発音などの問題があれば、発音矯正士へ相談するよう促されることがあるそうです。発音矯正士はその名の通り、発音の矯正などを行う専門家で、レッスンに通う子どもも少なくないといいます。
フランスの小学校
小学校の最初の一年は「準備学年」とされ、フランス語の習得に必要になる多数の発音をじっくりと学ぶそうです。そのほかの授業が始まるのは、2年生以降となります。フランスの小学校では、一般的な授業のほかに、観劇やプール教室などの校外学習も多く行われるといいます。
また小学生までは大人が送り迎えをすることが求められるため、保護者が送迎できない場合はシッターなどを雇う家庭も多いようです。
フランスの中学校
中学校では、3年生のときに職業体験を行い、その後レポートをまとめて発表を行うといいます。この職業体験の受け入れ先は、学校ではなく生徒本人や保護者が自分で探さなくてはならないのだとか。
また卒業する際は「Diplôme national du brevet(ディプロム・ナショナル・ドゥ・ブレヴェ)」という全国統一試験を受ける必要があります。
フランスの高等学校
フランスの高校には普通学校と職業学校の2種類がありますが、日本のような入試試験はないといいます。高校への進学の可否は中学校の成績によって判断され、あとから挽回することが難しいという点は、日本の教育よりもシビアだといえるでしょう。
ちなみに公立高校の場合、小学校や中学校と同様に学区制になります。私立高校の場合は、住所に縛られずに学校を選ぶことができますが、入学の可否が中学校の成績次第だという点は公立高校と変わりません。
高校は義務教育ではないため、成績が悪ければ留年となります。また卒業するためにはバカロレアという試験に合格することが必要になり、不合格の場合はもう一度3年生をやり直さなくてはなりません。
普通高校の場合は「普通バカロレア」職業高校の場合は「職業バカロレア」と学校によって卒業時に取得するバカロレアの種類は異なりますが、大学などに進学したいのであれば普通バカロレアの取得が条件となります。
このバカロレアは、国際バカロレア委員会認定の国際バカロレアとは異なります。国際バカロレアを取得していると、大学入試に有利になる国も多いですが、フランスでは普通バカロレアがなければ進学できない大学が主流だといいます。
フランスの教育制度の特徴
ここからは、日本と大きく異なるフランスの教育制度の特徴をご紹介します。
落第・飛び級制度がある
フランスでは成績が悪ければ落第になることがあるとご説明しましたが、反対に成績が良ければ飛び級をすることも可能です。飛び級は学校側から提案され、生徒や家族が話し合いで決めるといいますが、授業の難易度が急激にあがる教科もあることから、必ずしも受け入れる家庭ばかりではないようです。
学校行事はほとんどない
日本では運動会や授業参観など、さまざまな学校行事がありますが、フランスではそういった学校行事はほとんどないのだとか。入学式や卒業式なども行われないそうです。
家庭科の授業はない
フランスの学校教育で学ぶのは、学問が中心となります。家庭科など日常生活で必要なことは家庭で学ぶものだという考えが一般的なので、家庭科だけでなく道徳や生活といった授業も行われないようです。
第ニ外国語は中学校から
フランスでは中学生になると第一外国語として英語などを学びますが、同様に在学中からドイツ語やスペイン語などの第二外国語の学習も始まります。
学校年度・長期休暇
フランスの学校年度は9月に始まり、翌6月末から7月上旬に終わります。日本と同様に3学期制ですが、長期休暇は年5回と日本よりも多くなっています。ただしフランスの祝祭日は日本よりも少ないのだとか。
授業時間
フランスでは小学校低学年から16時頃まで授業が行われ、高学年になると18時頃まで学校で過ごすことになるといいます。また1時間の授業時間は90分と、こちらも日本と比べて長時間となっています。
一方で昼休みは2時間も設けられており、昼食をとるために一時帰宅する子どもも珍しくありません。
教科書
フランスの教科書は担任によって決められるため、同じ学校に通っていても、クラスが違えば使用する教材は異なるといいます。なかには教科書は使用せず、ワークブックやプリントを中心に授業が行われることも。
また教科書は貸し出しとなっており、進級前に返却するのだそうです。ちなみに文房具は各自で用意する必要がありますが、ノートは無料で支給されるといいます。
さいごに
フランスと日本に限らず、教育制度は国によって大きく異なるもの。またフランスの教育制度は、時代の移り変わりにあわせて変化しているといいます。日本と比べて、成績が将来により大きな影響を及ぼすフランスだからこそ、熱心に学業に励む学生が多いのかもしれませんね。
参考サイト
- フランス国民教育省(http://www.education.gouv.fr/:フランス語)
- フランス政府留学局・日本支局(https://www.japon.campusfrance.org/ja)